抄録
房総半島中部の小糸川上流域を中心に安房層群天津層,清澄層の地質を調査し,放散虫化石層序を検討した. 天津層・清澄層からは温暖種と寒冷種を共に含む放散虫化石が比較的豊富に産出した.その結果,低緯度域の放散虫化石帯区分ではRN5帯(D. alata帯)からRN10-RN11帯(P. doliolum-L. audex帯)に,北太平洋中・高緯度域の帯区分ではE. inflatum帯からS. pylomaticus-C. sakaii帯に相当することが明らかになった.放散虫および他の微化石・放射年代データを総合し堆積速度曲線を描いたところ,中新統/鮮新統境界は清澄層下部のKy6層準付近に推定された.また,天津層中上部では堆積速度の著しい低下が認められ,広域的な地質イベントとの関連性について考察を行った.