抄録
関東山地東縁部比企丘陵には,結晶片岩角礫を多量に含む淘汰不良の中新統青岩礫岩が分布する.今回,礫の岩石学的・年代学的検討を行い,その起源を明らかにした.K-Ar年代測定によると,結晶片岩のフェンジャイト年代は石英片岩で127.2~121.0 Ma,泥質片岩で98.4~80.7 Maで,これまでに報告された関東山地三波川変成岩類の年代よりも有意に古い.一方花崗岩類は,角閃石年代で131.5~114.0 Ma,フェンジャイト年代で97.8~89.9 Maを示す.トーナル岩マイロナイト試料のSr同位体比初生値は0.705であり,領家花崗岩類よりも古い年代・低い初生値を示す.したがって結晶片岩礫は現在露出している三波川変成岩類の上位に存在したより古いユニット,花崗岩類礫は古領家帯構成要素(寄居複合岩体)に対比される.青岩礫岩は,中期中新世に三波川帯が急激に上昇し,その上位の古領家帯と共に削剥され,そのごく近傍に堆積したものと考えられる.