抄録
北海道北穂別地域には,従来の研究で蝦夷層群の佐久層と鹿島層が分布するとされてきたが,全域にわたって主に生物擾乱を受け塊状となった泥岩からなる鹿島層が分布していることを本研究で明らかにした.本地域の中央部には南北走向の長和断層と呼ばれる変位量の大きな断層がある.アンモナイト類やイノセラムス科二枚貝類の化石分帯による時代対比に基づくと,本断層の東西で地層の時代が異なり,西側は中部ないし上部チューロニアン階から上部コニアシアン階に対比され,東側はサントニアン階に対比される.
また,北方に隣接する大夕張地域と本調査地域とを比較すると,大夕張地域で見られる鹿島層(“上部蝦夷層群”)の堆積開始時期の岩相と時代との斜交が本調査地域にも認められ,大夕張地域において堆積開始時期が早かった北部ないし中部の時期と同じかそれよりも早い時期に蝦夷層群鹿島層(“上部蝦夷層群”)の堆積が始まったと考えられる.