地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
117 巻, 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論説
  • 本田 豊也, 高橋 昭紀, 平野 弘道
    2011 年117 巻11 号 p. 599-616
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/03/18
    ジャーナル フリー
    北海道北穂別地域には,従来の研究で蝦夷層群の佐久層と鹿島層が分布するとされてきたが,全域にわたって主に生物擾乱を受け塊状となった泥岩からなる鹿島層が分布していることを本研究で明らかにした.本地域の中央部には南北走向の長和断層と呼ばれる変位量の大きな断層がある.アンモナイト類やイノセラムス科二枚貝類の化石分帯による時代対比に基づくと,本断層の東西で地層の時代が異なり,西側は中部ないし上部チューロニアン階から上部コニアシアン階に対比され,東側はサントニアン階に対比される.
    また,北方に隣接する大夕張地域と本調査地域とを比較すると,大夕張地域で見られる鹿島層(“上部蝦夷層群”)の堆積開始時期の岩相と時代との斜交が本調査地域にも認められ,大夕張地域において堆積開始時期が早かった北部ないし中部の時期と同じかそれよりも早い時期に蝦夷層群鹿島層(“上部蝦夷層群”)の堆積が始まったと考えられる.
  • 菅森 義晃, 亀高 正男
    2011 年117 巻11 号 p. 617-624
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/03/18
    ジャーナル フリー
    福井県小浜市西部の堆積岩複合体を構成する珪長質凝灰質泥岩からジュラ紀古世の放散虫化石が産出した.この放散虫化石群集はCanoptum spp.が優勢で,Natoba spp., Pantanellium browni Pessagno and Blomeなどを含む.この群集の特徴はCanoptum群集のものと一致し,ジュラ紀古世Hettangian後期からSinemurian前期の年代を示す.化石が産出した露頭を含む堆積岩複合体は超丹波帯および丹波帯のどちらに帰属するかについて確定していなかったが,岩相および年代から丹波帯のジュラ紀古世堆積岩複合体(周山コンプレックス)に帰属していることが示された.
  • 藤田 和彦, 千代延 俊, 溝渕 年哉, 井龍 康文
    2011 年117 巻11 号 p. 625-631
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/03/18
    ジャーナル フリー
    本論は,これまで知念層の分布が報告されていない沖縄島西方の那覇港沖(水深約19 m)で掘削されたコア試料から発見された知念層を報告する.琉球層群石灰岩直下の未固結細粒堆積物7試料(海底からの深度約28~36 m)について,岩相の検討,石灰質ナンノ化石生層序年代の決定,底生有孔虫化石による堆積環境の復元を行った.その結果,岩相は主に石灰質シルト・砂からなり,知念層の岩相的特徴に類似する.石灰質ナンノ化石分析の結果,石灰質ナンノ化石基準面11から10の間(1.706~1.392 Ma)に対比される.底生有孔虫化石群集は,陸棚斜面上部(水深100~200 m)の砂泥底環境を示唆する.以上の結果から,沖縄島南部で糸満層の石灰岩が堆積した頃,その東西海域の陸棚斜面では知念層に対比できる石灰質シルト・砂が堆積したことが示唆される.
  • 小林 真生子, 齊藤 毅, 沖津 進
    2011 年117 巻11 号 p. 632-636
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/03/18
    ジャーナル フリー
    埼玉県の松山層群に属する中新世の楊井層は大型植物化石を多く産出する.楊井層の年代を明らかにすることは,同時代の植物化石フロラを比較し,日本の中新世の古植生を復元するうえで重要である.そこで,楊井層の2つの凝灰岩の中に含まれるジルコンでフィッショントラック年代を測定した.その結果,楊井層の最下部凝灰岩(Y-1凝灰岩)のフィッショントラック年代は9.1±0.7 Ma,最上部凝灰岩(Y-9凝灰岩)のフィッショントラック年代は9.6±1.3 Maであった.これらの結果から,楊井層は後期中新世の地層であると考えられる.楊井層の植物化石フロラは群馬県の上部板鼻層の植物化石フロラに年代が近いと考えられる.両植物化石フロラを比較すると,楊井層には山地に生育する植物種の化石は含まれていなかったが,上部板鼻層の植物化石群には山地の植生を構成する種が含まれていた.楊井層の植物化石は板鼻層よりも山地から遠い場所で堆積したと考えられる.
  • 熊野川—長棟川斑れい岩複合岩体の例
    上塘 斎, 大和田 正明, 加納 隆
    2011 年117 巻11 号 p. 637-647
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/03/18
    ジャーナル フリー
    飛騨帯は日本列島の骨格をなす地帯であり,主に各種深成岩類と高度変成岩類から構成される.飛騨帯中部地域の熊野川-長棟川地域には,飛騨帯の広域変成作用を受けた斑れい岩複合岩体が分布する.この複合岩体は火成岩組織をよく保存していることから,マグマ過程やマグマ形成場の検討に適している.本論文では,熊野川-長棟川斑れい岩複合岩体の産状と地球化学的性質について検討した.その結果,複合岩体を構成する全ての岩相はマグマ同士で共存し,それらのマグマは海洋プレートの沈み込む大陸縁辺部で形成されたと推察される.
報告
口絵
feedback
Top