抄録
混濁流がオートサスペンションに達すると,外部条件(斜面傾斜など)が変化しない限り流れは減衰せず,無限に持続する.この現象は,混濁流が底面での堆積・侵食作用で密度を変化させることから生じている.混濁流が底面を侵食すると,巻き上げた堆積物により流れの密度は増加する.増加した密度によって流れは加速し,さらに混濁流は堆積物を侵食するようになる.このサイクルによってオートサスペンションが実現する.理論上,自然界の海底谷を流れる侵食的な混濁流の多くはオートサスペンション状態であると推定されているが,実際の観測や水槽実験ではまだ十分に確認されていない.オートサスペンションは混濁流の起源や海底扇状地の発達過程を考える上で鍵となる現象である.今後,理論を実験と観測で検証し,泥の固着性などより自然状態を考慮したモデルでオートサスペンションの成立条件を検討する必要があるだろう.