地質学雑誌
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論説
日高火成活動帯パンケヌシかんらん石斑れい岩体の同位体年代とその造構論上の意義
前田 仁一郎銭谷 竜一倉本 能行板谷 徹丸加々美 寛雄
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2011 年 117 巻 4 号 p. 204-216

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抄録
日高火成活動帯のパンケヌシ斑れい岩体からK-Ar角閃石年代(17.5±0.6 Ma),K-Ar黒雲母年代(17.3±0.4 Ma),Rb-Sr 黒雲母年代(17.3±0.1 Ma)を得た.これらの年代値と既に報告されているU-Pbジルコン年代との調和から,パンケヌシ岩体の貫入は前期中新世であると考えられる.試料が受けた冷却速度は102-103℃/myr オーダーであり,単純な熱伝導による冷却速度よりも1-2桁大きい.前期中新世のN-MORB質マグマの貫入に引き続く,東急傾斜構造の形成を伴う急速な上昇運動の存在が示唆される.前期中新世のマグマ貫入と急速冷却はパンケヌシ岩体の下位の曲り沢トーナライトや上位の日勝峠花こう岩体にも観察される.この急速で非定常的な造構プロセスの候補として,千島海盆の拡大と千島弧の西進・東北日本弧との衝突をあげることができる.
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© 2011 日本地質学会
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