2011 年 117 巻 6 号 p. 357-376
福島県西部に位置する沼沢火山のBC3400年カルデラ形成噴火(沼沢湖噴火)のマグマ供給系について検討した.この噴火の本質物質は,白色軽石,灰色軽石,黒色スコリア,灰色スコリアからなる.沼沢湖噴火には3種の端成分マグマ(デイサイト質端成分マグマ,低Ba(LBa)苦鉄質端成分マグマ及び高Ba(HBa)苦鉄質端成分マグマ)が関与した.デイサイト質端成分マグマからは白色軽石と灰色軽石が形成され,デイサイト質端成分マグマとLBaマグマとの安山岩質混合マグマからは黒色スコリアが,また,この混合マグマとHBaマグマとの安山岩質混合マグマからは灰色スコリアが形成された.LBaマグマは沼沢湖噴火の直前にデイサイト質マグマ溜りに注入した.一方,HBaマグマは,沼沢噴火の途中でマグマ溜りに注入し,噴火様式を推移させる一因となった.