地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
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117 巻, 6 号
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特集 高分解能火山地質学における地球物質科学の展開
総説
  • ―噴出物の高分解時間変化からの知見―
    伴 雅雄
    2011 年117 巻6 号 p. 310-328
    発行日: 2011/06/15
    公開日: 2011/11/03
    ジャーナル フリー
    精度の高い噴火史を基にした岩石学的研究により,沈み込み帯活火山のマグマ供給系進化の解明が格段に進展し,その成果は噴火予知にも利用されつつある.玄武岩主体の活動的な火山の場合は供給系の構成が明らかにされると共に,浅部マグマ溜りが深部から注入を受けて進化する経過や,より深部の組成変化とその要因が解明されつつある.一方,安山岩~デイサイト質の火山では噴出物の特徴の時間変化に多様性があり,一噴火で急変するもの,100~800年程度で周期的に変化するもの,あるいは時間変化が見られないものがある。各々について供給系の構成や特に浅部マグマ溜りの進化を精度良く解明する研究が活発に行われている.また,噴出率の急上昇など特徴的な変化が認められる時期には浅部-深部マグマ溜りあるいは初生マグマ発生領域に大きな転換が起こっていることが判明してきている.この場合マグマ溜りの寿命について制約条件が得られる.
  • 中村 美千彦
    2011 年117 巻6 号 p. 329-343
    発行日: 2011/06/15
    公開日: 2011/11/03
    ジャーナル フリー
    噴出物の物質科学的研究の進展により,高分解能火山層序に基づいて過去の噴火を“観測”することが可能となりつつある.噴火様式の推移と,それに対応したマグマの火道上昇過程やマグマ溜まり内プロセスに関するケーススタディを増やすことは,規則性・普遍性を持つ噴火様式の推移パターンの発見につながり,噴火現象の分岐メカニズムに着目した“噴火メカニズム系統樹”の拡充に役立つ.研究方法で著しく進展した点として,石基マイクロライトの減圧結晶作用に基づくマグマ上昇プロセスの理解,揮発性成分のメルトへの溶解度の精密決定と,揮発性成分分析手法の高精度化による圧力スケールの読み取り精度の向上,浸透率測定データの蓄積やX線CT技術の発達などによる組織情報の活用などが挙げられる.これらによって,火山層序が特徴的に備える,噴火ダイナミクスの時間スケールと噴出物の体積に関する情報が,定量的に読み出されるようになってきた.
  • 大場 司
    2011 年117 巻6 号 p. 344-356
    発行日: 2011/06/15
    公開日: 2011/11/03
    ジャーナル フリー
    熱水変質鉱物火山噴出物は,水蒸気噴火によって火山地下よりもたらされる.近年の噴火事例研究と同様,高分解能火山層序学でも熱水変質鉱物火山噴出物の記載が増えている.近年の噴火事例研究では,噴火と火山下熱水系の関係が指摘されており,その熱水系の構造を理解するには,熱水性鉱床や地熱研究の知見が有益である.マグマ噴火頻度の低い火山には,火山体内部に発達した珪化変質帯や高度粘土化変質体由来の変質鉱物を多く含む噴出物が産する.一方,マグマ噴火頻度の高い火山の熱水変質鉱物火山噴出物には硫黄系鉱物が卓越する.熱水変質鉱物火山噴出物は主に降下堆積物として産し,フロー堆積物も認められる.噴火には斜面移動が関係する場合としない場合があり,それぞれマグマ上昇が関係する場合としない場合がある.マグマの組成や貫入頻度と,熱水変質鉱物を放出する水蒸気噴火の頻度や構成鉱物の間には密接な関係がある.
論説
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