2011 年 117 巻 Supplement 号 p. S103-S120
茨城県中・南部の常陸台地を構成する下総層群は,これまで房総半島の模式層序との対比が確立されておらず,地域内でも研究者によって様々な見解があり,異論が多かった.そこで新たに見いだされたテフラを広域に追跡することでテフラ層序を組み立てて,それを基準として堆積相解析やシーケンス層序学的解析を行った.その結果,下総層群を藪層,上泉層,清川層,横田層,木下層,常総層の6層を区分した.さらに,最終間氷期の堆積物である木下層に2つの堆積サイクルを認め,剣尺(けんじゃく)部層,行方(なめかた)部層を新たに設定した.本巡検では常陸台地における下総層群の各構成層について,案内者らの見解を紹介し,模式層序との対応を解説,議論する.さらに,テフラと堆積相の分布から推定される,木下層の堆積過程について概説する.特に堆積物供給量の違いを背景として,涸沼(ひぬま)を境界として南北で異なる堆積システムの時空変化について,常陸台地を縦断して比較を行う.