地質学雑誌
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総説
鉱物・化学組成から読み取る火星の環境変動史
関根 康人
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2012 年 118 巻 10 号 p. 650-663

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抄録

近年の周回探査機による高解像度リモートセンシングデータや,着陸機による鉱物・化学組成のその場分析により,火星には1000を超える水に関連した堆積物層の露頭が存在することが分かってきた.これら露頭の鉱物・化学組成の解析により,火星の古環境変遷の概要が明らかになりつつある.約43−40億年前の火星では,地下もしくは表層での中性−塩基性の水と玄武岩との化学反応により,粘土鉱物や炭酸塩岩が形成していた.その後,約40−32億年前には,強酸性の表層水が蒸発する際に沈殿する硫酸塩岩やシリカ水和物の存在で特徴付けられる,酸化的かつ乾燥した表層環境に変化してきた.また,これ以降の時代では,液体の水は火星上の堆積物の形成において主要なプロセスではなくなった.本稿では,火星上に見つかった堆積物層の特徴やそれらの起源,環境変動を引き起こした原因,新たに浮かび上がった環境進化に関する謎や課題について議論する.

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© 2012 日本地質学会
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