地質学雑誌
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総説
火星のメタン
石丸 亮小松 吾郎松井 孝典
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2012 年 118 巻 10 号 p. 664-674

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抄録

火星大気中にメタンが存在していることが4つのグループの火星探査機観測及び地上望遠鏡観測から報告されている.いずれの観測も固有の問題を抱えているが,異なる観測機器・条件であっても調和的な結果(季節変動,全球平均量など)が得られている。このことはメタンの存在が確からしいことを示唆している.火星のメタンの起源は,地下での非生物の地質作用,生物活動,または両者の組み合わせが有力であると考えられているが,現状では十分な証拠が得られておらず未だ火星科学最大の謎の一つとされている.一方,メタンが大気に放出される際には,地球同様,泥火山のような特徴的な地形を伴う可能性がある.そのような地形は火星上で見つかっているが,メタンとの関連は明らかにされていない.本稿では,火星のメタンの観測やこれまで提唱されているメタンの生成・放出・消費過程を紹介するとともに,それぞれに残された課題と今後の展望について解説する.

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© 2012 日本地質学会
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