地質学雑誌
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論説
島根県大田市の模式地における中新統久利層の生層序
林 広樹橋野 慎平野村 律夫田中 裕一郎
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2013 年 119 巻 4 号 p. 300-311

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抄録
久利層は山陰地方中部の中新統標準層序を構成する地層のひとつである.久利層では, 先行研究により底生有孔虫の広域対比面とされる「Foram. Sharp Line(FSL)」が認められ ているが,模式地の一部を構成する忍原川ルートにおいてはこれを否定する見解もある. このFSLは石灰質有孔虫がほとんど産出しなくなる層準であるとされるが,本研究でボロ ン法による再検討を試みた結果,ほぼ連続的に浮遊性有孔虫の産出を認めた.浮遊性有孔虫および石灰質ナンノ化石の結果に基づくと,本ルートの久利層は,浮遊性有孔虫化石帯 N.8帯,および石灰質ナンノ化石帯CN3帯に対比される.この年代は,広域対比面FSLとされている年代と比べると,50万年以上古い.この微化石年代は,備北層群上部のうちFSLよりも下位の層準に相当する.備北層群上部では本ルートと同様に外洋性の微化石が 産出することから,この時期に中国地方の広い範囲にわたって外洋水の影響が強く及んでいたことが示唆される.
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© 2013 日本地質学会
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