西南日本山陰帯中央部地域の複合バソリスを構成する白亜紀–古第三紀花崗岩類の全岩化学組成とSr–Nd同位体比の時代的変遷について検討し,山陰地域と地質学的関係が深いとされる韓半島の慶尚盆地のそれと比較検討した.
因美古期貫入岩類(78–68 Ma)はK
2O,Rb,Y,Zr,Fに富み,因美新期貫入岩類(68–53 Ma)と田万川期貫入岩類(43–30 Ma)はMgO,P
2O
5とSrに富み,高いK/Rb比,Ti/Zr比と低いK
2O/Na
2O比を有する.Sr,Nd同位体比は因美新期から田万川期にかけて枯渇する傾向を示し,εNd(T)は68 Ma頃から高い値へと変化する.同位体比にみられる同様の枯渇傾向は慶尚盆地でも認められる.両地域に共通にみられるこのような時代的変化は,アセノスフェアに由来する枯渇した苦鉄質マグマの注入による下部地殻の改変が白亜紀最末期頃から始まった結果と考えられる.
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