2014 年 120 巻 11 号 p. 393-412
日高変成帯中部地域に分布する37 MaのIタイプとSタイプトーナル岩のSrとNdの同位体比組成から,トーナル岩類の成因を検討した.
Iタイプの角閃石黒雲母トーナル岩は砂泥質変成岩類に貫入し,その周囲にSタイプの白雲母黒雲母トーナル岩を形成している.その同位体比組成変化は壁岩の砂泥質岩との同化分別結晶作用に起因する.また,NdIは変成帯下部層の苦鉄質変成岩類と一致しない.このことから,角閃石黒雲母トーナル岩マグマの起源物質は苦鉄質変成岩類ではない.その候補となるのは,音調津地域のノーライトを形成した苦鉄質マグマと同等の物質であろう.