2014 年 120 巻 2 号 p. 71-86
富山県富山市八尾町には鮮新統三田層が分布する.この地層は3層の凝灰岩層(OT3,MT1,MT2)を含み,OT3とMT2凝灰岩層の年代は5.2 ± 0.5 Maおよび2.2~2.3 Maと見積もられている.今回,八尾町平林周辺の赤江川流域に分布する,MT1凝灰岩層に対してフィッショントラック法に基づく年代値の推定と,この層準付近から産出する貝形虫と浮遊性有孔虫化石の群集解析を行い,古環境を推定した.その結果,赤江川本流と支流で,3.5 ± 0.2 Maおよび3.4 ± 0.2 Maという年代値が見積もられ,研究結果を統合すると,三田層における暖流系貝化石の初産出層準は3.66~約3.4 Maの範囲にあることが明らかとなった.また,微化石の群集解析から,調査層準下部から上部に向けて,冷温な湾域から温帯性の開放的な浅海域への変遷が認められた.最上部では強い暖流を示す貝形虫化石群集が産出した.