地質学雑誌
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論説
愛知県段戸山地域の領家変成帯に発達する2つの熱構造
三宅 明横江 和貴鈴木 文悟五十嵐 夕香莉
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2014 年 120 巻 9 号 p. 299-312

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抄録
愛知県段戸山地域は領家変成岩類が広く分布し,これらの変成岩類を神原トーナル岩(古期花崗岩類)と武節花崗岩(新期花崗岩類)が貫入している.変成泥岩の鉱物組み合わせを基礎にした変成分帯図を作成した結果,段戸山地域には2つの大きなスケールの熱構造が,本地域の花崗岩類の分布とは関係せずに,存在することが明らかになった.ひとつの熱構造では本地域の中央付近から南東方向に変成度が上昇し,もうひとつの熱構造では北西方向に変成度が上昇する.前者は,片理形成以前に成長した紅柱石が見られることや周辺地域の変成分帯との比較から,領家広域変成作用によって形成されたと考えられる.一方,後者は,カリ長石と共存する紅柱石が片理形成後に成長しているのが見られることから,広域変成作用後のより低い圧力のもとで形成したと考えられる.この変成イベントでは,急激な温度上昇プロセスによって,細粒で高変成度の変成岩類が生じた.
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© 2014 日本地質学会
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