抄録
球状炭化粒子(SCPs)は,産業活動での化石燃料燃焼によって発生するフライアッシュ粒子の一つである.球状炭化粒子は,主に炭素からなり,そのため長期にわたって堆積物中に保存される.それゆえ堆積物中の球状炭化粒子は,環境汚染の程度や歴史を明らかにするために用いられる.球状炭化粒子は,空間的および時間的な大気汚染,あるいは堆積物コアの年代指標として用いられ,さらには越境汚染の評価(例えば,非工業地域で検出される汚染物質の発生源の特定)に用いることができる.堆積物中の球状炭化粒子含有量および形態,粒径,化学組成などの各特徴は,過去および現在における大気汚染に関する有用な情報を提供する.本総説では,その分析法と活用法について,特に過去約10年間の日本での研究成果を中心に概説する.