抄録
褶曲軸に直交する平面内での2次元的thick-skin変形を想定した,基盤の鉛直昇降による被覆層の褶曲形成モデルを検証すべく,千葉県富津市南西部で地質調査を行った.この地域では,安房層群上部(上部中新統~鮮新統)が,東西に併走する背斜と向斜をなしている.調査は約3 km四方の範囲で行い,地層厚の側方変化・地質図規模の構造・小断層を検討した.調査の結果,同モデルの想定に反して,堆積時には現在の褶曲構造と不調和な地質図規模の3次元的昇降運動があったことがわかった.さらに,小断層群が示す露頭規模の変形も3次元的であった.したがって,同モデルは反証された.また,地質図規模のフラット・ランプ構造を含む14条の層面滑り断層と露頭規模の後背地傾斜デュープレックスも発見され,これらは北東~北北東バージェンスのthin-skin変形を示していた.