地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
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121 巻, 10 号
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論説
  • 菅谷 真奈美, 奥田 昌明, 岡田 誠, 坂本 竜彦
    2015 年 121 巻 10 号 p. 349-358
    発行日: 2015/10/15
    公開日: 2016/01/15
    ジャーナル フリー
    オホーツク海の16カ所で採取された海底表層堆積物試料から花粉粒を抽出し,オホーツク海底面における表層堆積物中の花粉群の平面分布を求めた.産出した花粉濃度と花粉出現頻度より,オホーツク海域の花粉群を,海岸から100 km程度までの沿岸域とより遠方の遠洋域の2つに区分した.沿岸域では,トウヒ属・マツ属・カバノキ属・ハンノキ属にモミ属・コナラ亜属・ハシバミ属・ニレ属/ケヤキ属・ツツジ科などが随伴する北方林の組成が特徴で,直近の陸上の植生を適切に反映し,花粉濃度も海底堆積物としては比較的高い値を示していた.これに対して海岸から100 km程度離れた遠洋域では,針葉樹花粉のマツ属やトウヒ属が特に卓越して産出することが特徴であり,花粉濃度も一様に低い値であった.以上より,本論文におけるオホーツク海沿岸域から得られる花粉群は,近傍の陸上植生を適切に反映しており,沿岸流が花粉粒子に及ぼす影響は比較的小さいことが分かった.
  • 古角 晃洋, 佐藤 活志, 山路 敦
    2015 年 121 巻 10 号 p. 359-372
    発行日: 2015/10/15
    公開日: 2016/01/15
    ジャーナル フリー
    電子付録
    褶曲軸に直交する平面内での2次元的thick-skin変形を想定した,基盤の鉛直昇降による被覆層の褶曲形成モデルを検証すべく,千葉県富津市南西部で地質調査を行った.この地域では,安房層群上部(上部中新統~鮮新統)が,東西に併走する背斜と向斜をなしている.調査は約3 km四方の範囲で行い,地層厚の側方変化・地質図規模の構造・小断層を検討した.調査の結果,同モデルの想定に反して,堆積時には現在の褶曲構造と不調和な地質図規模の3次元的昇降運動があったことがわかった.さらに,小断層群が示す露頭規模の変形も3次元的であった.したがって,同モデルは反証された.また,地質図規模のフラット・ランプ構造を含む14条の層面滑り断層と露頭規模の後背地傾斜デュープレックスも発見され,これらは北東~北北東バージェンスのthin-skin変形を示していた.
巡検案内書
  • 原山 智
    2015 年 121 巻 10 号 p. 373-389
    発行日: 2015/10/15
    公開日: 2016/01/15
    ジャーナル フリー
    日本を代表する山岳景勝地である上高地は,槍・穂高連峰などの高峰に囲まれた谷底盆地である.日本では山岳地域の河谷の多くが急勾配で狭いV字谷であるのに対し,上高地盆地の勾配(大正池-徳沢間10 km)は8‰と小さく,盆地の幅は600-900 mと広い.この緩傾斜で幅広の谷底は,12.4 kaに焼岳火山群白谷山-アカンダナ火山の活動により岐阜県側に流下していた古梓川がせき止められ生じた古上高地湖が埋積されて形成された.槍・穂高連峰を構成する第四紀カルデラ火山-深成複合体を観察する上でも上高地では優れた巡検が可能である.第四紀花崗岩である滝谷花崗閃緑岩も,巨大カルデラを埋積したデイサイト質溶結凝灰岩も谷底の遊歩道沿いで観察可能である.また形成まもないカルデラ火山では観察不可能な,カルデラ内部の陥没カルデラ縁断層,カルデラ床やカルデラ壁崩壊角礫岩が観察できる点でも貴重なフィールドである.
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