地質学雑誌
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論説
北海道南西部奥尻島で発見された津波堆積物
加瀬 善洋仁科 健二川上 源太郎林 圭一髙清水 康博廣瀬 亘嵯峨山 積高橋 良渡邊 達也輿水 健一田近 淳大津 直卜部 厚志岡崎 紀俊深見 浩司石丸 聡
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2016 年 122 巻 11 号 p. 587-602

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抄録

北海道南西部奥尻島南端の低地における掘削調査から,泥炭層中に5枚のイベント堆積物を見出した.イベント堆積物の特徴は次の通りである; (1)陸方向および川から離れる方向へ薄層化・細粒化する,(2)級化層理を示す,(3)粒度組成の特徴は河床砂とは異なり,海浜砂に類似する,(4)粒子ファブリックおよび堆積構造から推定される古流向は概ね陸方向を示す,(5)渦鞭毛藻シストおよび底生有孔虫の有機質内膜が産出する,(6)海側前面に標高の高い沿岸砂丘が発達する閉塞した地形において,現海岸線から内陸へ最大450mほど離れた場所まで分布する.以上の地質・地形学的特徴に加え,過去に高潮が調査地域に浸水した記録は認められないことから,イベント堆積物は津波起源である可能性が極めて高い.14C年代測定結果と合わせて考えると,過去3000-4000年の間に1741年および1993年を含めて少なくとも6回の津波が発生しているものと考えられる.

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© 2016 日本地質学会
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