猪苗代湖で掘削されたボーリングコア(INW212)の深度200~0cmを対象に,210Pb,134Cs,137Cs分析を行った.210Pb(ex)の分析結果から,深度39cm以深が約90年前以前に相当する可能性が示された.次に,134Csと137Csの分析結果から,深度29cmが1950年代初頭に相当すると推定された.さらに,これらの年代値と岩相層序について検討を行った結果,深度13.5~0cmの塊状の砂質シルトが2011年の東北地方太平洋沖地震に起因する堆積物であり,深度42~37.5cmの灰褐色粘土が1888年の磐梯山の崩壊に関連する堆積物であることが推定された.これらのイベントの深度と年代からINW2012コアの定常的な堆積速度を算出した結果,深度200.0~42.0cmにおいて1.0mm/yr,深度42.0~0cmにおいて約2.0mm/yrとなった.
1927年北丹後地震の地表地震断層が出現した郷村断層の2次元比抵抗構造を求めた.これは高比抵抗領域中の3つの低比抵抗領域で特徴づけられる.このうち1つは郷村断層よりも東側に位置するほぼ水平な領域であり,測線の近くで掘削されたボーリングから得られた岩相および電気検層結果と良く対応する.浅部の低比抵抗領域は空隙が多い風化花崗岩の下部に地下水が含まれることに起因すると解釈した.郷村断層と郷西方断層の地表断層トレース下には,それぞれ低比抵抗領域が存在する.前者は郷村断層の運動に起因する破砕域を示すと解釈した.後者が小規模で孤立した領域であることから,郷西方断層は副次的な断層であると推定した.さらに郷村断層と山崎断層系土万断層の比抵抗構造を比較し,活断層下の低比抵抗領域の幅の増加や領域内の比抵抗値減少には,千年程度の最新活動期の差異よりも平均変位速度や累積変位の寄与が大きいと推定した.
北海道南西部奥尻島南端の低地における掘削調査から,泥炭層中に5枚のイベント堆積物を見出した.イベント堆積物の特徴は次の通りである; (1)陸方向および川から離れる方向へ薄層化・細粒化する,(2)級化層理を示す,(3)粒度組成の特徴は河床砂とは異なり,海浜砂に類似する,(4)粒子ファブリックおよび堆積構造から推定される古流向は概ね陸方向を示す,(5)渦鞭毛藻シストおよび底生有孔虫の有機質内膜が産出する,(6)海側前面に標高の高い沿岸砂丘が発達する閉塞した地形において,現海岸線から内陸へ最大450mほど離れた場所まで分布する.以上の地質・地形学的特徴に加え,過去に高潮が調査地域に浸水した記録は認められないことから,イベント堆積物は津波起源である可能性が極めて高い.14C年代測定結果と合わせて考えると,過去3000-4000年の間に1741年および1993年を含めて少なくとも6回の津波が発生しているものと考えられる.
庵治花崗岩の三軸圧縮試験を封圧10-40MPa,間隙水圧10-30MPa,ひずみ速度5.0×10-6 s-1の条件下で行い,ひずみゲージで測定した変形中のひずみを解析した.最大軸差応力およびダイラタンシー開始応力は有効圧の上昇に伴い増加し,水の存在下ではやや減少する傾向が確認された.ヤング率は有効圧の上昇とともに若干増加し,水の存在下ではやや低い値を示すが,ポアソン比には有効圧や水による変化はみられなかった.試料中のマイクロクラックに起因するダイラタンシーは,乾燥状態の試験では封圧が低いほど促進されるが,間隙水圧下の試験では有効圧が低いほど抑制される傾向が確認された.この傾向は,間隙水が試料内部の応力集中を緩和させる働きがある可能性を示している.また,いずれの間隙水圧下の試験でも,最大軸差応力の約96%の応力を越えると試料への注入水体積が急増する傾向が確認され,このしきい値を境に試料内の空隙の連結が促進されることが示唆された.
Black-colored rocks (Black-colored Rocks hereafter) occur as veins and a volcanic dike in the Tetori Group, southern Ishikawa Prefecture. The Black-colored Rocks are composed of angular lithic clasts in a fine-grained (<10-50 µm) matrix. The lithic clasts in veins are derived from the Tetori Group (mudstone, sandstone, and conglomerate), whereas those in the volcanic dike are derived from both the volcanic dike and the Tetori Group. The matrix of the Black-colored Rocks consists mainly of very fine-grained quartz (usually 10 µm in size) with minor amounts of feldspar, maghemite, and unidentified carbon-bearing fine-grains. The Black-colored Rocks contain abundant SiO2 relative to the host rocks. The chondrite-normalized rare earth element (REE) pattern of the Black-colored Rocks is similar to that of their host rocks, although the REE abundance is lower in the former.