2017 年 123 巻 12 号 p. 1015-1033
志摩半島の秩父累帯北帯の南東部に分布する白木層群の泥岩から放散虫化石を初めて見出した.Minutusolla cf. micheleiやStriatojaponocapsa synconexaなどの放散虫化石群集から,本層群の泥岩は中期ジュラ紀のバッジョシアン期~バトニアン期前半に堆積したことが判明した.本層群の南西延長部には,これまで黒瀬川帯の白滝層群が分布するとされていた.しかし,両層群の境界域を調査・研究した結果,岩相・地質構造・微化石年代の共通性が認められ,少なくとも本研究地域では白滝層群は北帯の白木層群に統合できる.それは,北帯と黒瀬川帯の境界が従来の見解よりも南に位置することを意味する.日本列島における秩父累帯北帯の基準ユニットである上吉田ユニット・住居附ユニット・遊子川ユニットの岩相と陸源性砕屑岩年代を整理・比較した結果,白木層群は上吉田ユニットに対比できる蓋然性が高い.