地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
論説
北海道下川町上名寄から産出する中新統パンケ層産植物化石群集の古植生解析
成田 敦史矢部 淳松本 みどり植村 和彦
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 123 巻 3 号 p. 131-145

詳細
抄録

北海道北部の下川町上名寄に分布する中部~上部中新統パンケ層から33分類群より構成される大型植物化石群(上名寄植物群)を得た.パンケ層の堆積相解析と植物化石の組成,産状を基に上名寄植物群の示す古植生を復元した.上名寄植物群の示す古植生は,カツラ属やAcer subcarpinifolium(カエデ属),トウヒ属が優占する河畔植生,トクサ属やタケ亜科単子葉類,トウヒ属,ヤナギ属が優占する後背湿地植生,カツラ属やヤナギ属,フジキ属が優占する湖岸植生,湖周辺ではあるがブナ属優占の山地斜面のブナ林が強調された植生の4タイプの植生を認めた.上名寄植物群の組成的特徴は後期中新世~鮮新世前期の三徳型植物群と言える.堆積相と化石の産状から,上名寄植物群の主要構成種は,それらの近似現生種と同じ生育環境と考えられる.したがって,生態的に現在の植生に対比可能な群集が少なくとも北海道においては,中期中新世後期~後期中新世に成立していたことを示している.

著者関連情報
© 2017 日本地質学会
前の記事 次の記事
feedback
Top