地質学雑誌
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論説
北海道厚真(あつま)川を遡上した2011年東北沖地震津波による堆積物の形成過程および津波波形との対応
太田 勝一嵯峨山 積乾 哲也保柳 康一
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2017 年 123 巻 7 号 p. 551-566

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抄録

北海道の厚真川では,2011年東北地方太平洋沖地震津波が6.2km遡上し津波堆積物を形成した.本論では,堆積学的手法と津波波形を用いて津波堆積物の形成過程を復元した.津波堆積物を下位からユニット1~ユニット3に区分した.ユニット1は浅海砂と河床堆積物の混合物で,海側への流向を示す倒伏植生を伴う.戻り流れの堆積物で,津波初期の大きな潮位低下により形成された.ユニット2は浅海砂からなり,陸側に向かい急激に薄層化~細粒化し,陸側への流向を示す斜交葉理を伴う.遡上流による堆積物で,流れの振幅が減衰した津波の中盤に形成された.ユニット3は浅海砂とマッドドレープからなり,上下流方向の粒度変化が少ない.斜交葉理の示す流向は陸側が主で,部分的に海側を伴う.長周期波が卓越した津波後半に形成され,マッドドレープはfluid mud起源と考えられる.津波波形を用いて津波堆積物の形成過程を論じることは,河川津波の挙動の理解に貢献する.

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© 2017 日本地質学会
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