地質学雑誌
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論説
棚倉断層沿いの中新世アイスランダイト質デイサイト海底火山の復元
細井 淳橋本 純天野 一男
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2017 年 123 巻 8 号 p. 613-626

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抄録

棚倉断層沿いに発達する中新統は日本海拡大期の左横ずれ運動によって形成された横ずれ堆積盆を埋積したものである.そこに挟在する男体山火山角礫岩は,組成がアイスランダイト質であり,日本海拡大と密接に関係しているものと考えられている.主に堆積相解析を用い,火山体(男体山海底火山),火山活動の詳細を検討した結果,男体山海底火山は複数の噴火口をもつ複合火山であり,非爆発的な噴火を連続して起こしたことが明らかになった.当時の男体山海底火山周辺の古応力は,男体山火山角礫岩中の石英脈の方位がNE-SWからENE-WSWに揃うこと,沈降場であったことから,NW-SEからNNW-SSE方向の引張軸をもつトランステンション領域における応力場であったことが示唆される.棚倉断層の横ずれ運動によるトランステンションの応力により地殻が破断し,下部地殻の部分溶融起源のアイスランダイト質マグマが急速に上昇,噴出した可能性が高い.

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© 2017 日本地質学会
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