地質学雑誌
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総説
初期三波川変成作用の認識,及び後期白亜紀三波川沈み込み帯の描像
青矢 睦月遠藤 俊祐
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2017 年 123 巻 9 号 p. 677-698

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抄録

近年の四国三波川帯に関する研究から,テクトニックブロックと認識されて来た粗粒の含エクロジャイト岩体群に前期白亜紀(約116Ma)の初期三波川変成作用が記録されていることが判明した.一方,後期白亜紀(約89~85Ma)の主たる三波川変成作用については,海嶺の海溝への接近というテクトニックな状況,蛇紋岩化したマントルウェッジの存在,またスラブとマントル対流の結合深度(約65km)や上盤側大陸地殻の厚さ(30~35km)が認識され,当時の沈み込み帯模式断面図がかなり具体的に描けるようになった.同時に,散在するブロック状超苦鉄質岩類が上盤側マントルウェッジ起源であることも判明し,三波川帯は「深部沈み込み境界の化石」として再認識された.深部低周波微動やスロースリップなど,現世沈み込み帯で観測される注目すべき地質現象の解釈に当たり,物質科学的な情報を提供し得るフィールドとして新たな期待がかかる.

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© 2017 日本地質学会
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