地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
総説
開いた系における変成反応と物質移動の解析:
特異値分解法の新しい応用
西山 忠男森部 陽介森 康重野 未来湯口 貴史
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 123 巻 9 号 p. 717-731

詳細
抄録

多成分系の変成反応の解析のために有効な特異値分解の方法について,3成分系の具体例に即して紹介する.次に特異値分解の方法の開いた系への応用について,西彼杵変成岩の蛇紋岩メランジュに産する緑れん石藍閃石岩の後退反応を例に述べる.緑れん石藍閃石岩は構造岩塊として産し,周囲を緑色塩基性岩に縁どられており,隆起の際の後退反応が起こったことを示している.緑れん石藍閃石岩の鉱物組合せは緑れん石+藍閃石+ウインチ閃石+フェンジャイト+緑泥石+アルバイトであるが,緑色塩基性岩ではウインチ閃石が主体となり,少量のカリ長石が産することが特徴である.カリ長石の産出は稀であるので,その形成反応を8成分系での特異値分解法によって求めた.その結果,カリ長石形成反応とウインチ閃石形成反応の組み合わせによる全反応を考えることで,アイソコン図から推定される固定性成分,移動性成分の関係と調和的な結果が得られた.

著者関連情報
© 2017 日本地質学会
前の記事 次の記事
feedback
Top