地質学雑誌
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総説
地質温度計圧力計の最近の進展Ⅱ:
微量元素分配を用いた地質温度計
川嵜 智佑
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2017 年 123 巻 9 号 p. 707-716

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抄録

この論文では,微量元素分配の熱力学とその地質温度圧力計への応用について述べた.まず最初に,微量元素分配を地質温度計に応用するために,無限希釈溶液で普通に使われているRaoultの法則およびHenryの法則について述べた.微量元素の分配を用いた地質温度計について,Tiジルコン温度計,Zrルチル温度計,Ti石英温度計を取り上げた.これらの温度計について実用上の観点から,また,熱力学上の観点から議論した.特にTi石英温度計について詳細に議論した.すなわち,(1)石英へのTiの固溶度をppm wtで与えることの熱力学的な妥当性,(2)石英と多量の不純物を含んだルチルの間のTiの分配にNernstの分配則を適用すること,(3)SiO2-TiO2系で,Gibbsの自由エネルギーと総化学組成から導き出される安定な鉱物組み合わせ,(4)相平衡図から予測される石英中のTi含有量の温度変化,(5)不純物を含んだ石英のTiO2成分の活動度について議論した.

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© 2017 日本地質学会
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