2018 年 124 巻 12 号 p. 967-981
西南日本に分布する三畳紀・ジュラ紀層状チャートのこれまでに蓄積された古地磁気データについて,その微弱な初生磁化からどの程度の精度で過去のプレート運動や堆積場の古緯度が読み解かれるかを議論し,また,チャートが記録する二次磁化についての情報を整理した.これまでに報告されているチャートの初生磁化方向の極性判断を行い古緯度を求めた結果,三畳紀中期には赤道付近で堆積していたことが示された.チャートはその後,南中国ブロックの東縁に付加した可能性が高い.西南日本のチャートは複数の二次磁化成分を記録しており,磁化の獲得機構による分類では粘性残留磁化,熱粘性残留磁化,および化学残留磁化の三種類が存在している.このうち熱粘性残留磁化と化学残留磁化はそれぞれ,西南日本の600km離れた二つの地域間における類似性がみられ,広域的な二次磁化であることが示唆される.