2018 年 124 巻 3 号 p. 191-205
愛知県豊田市に分布する中新統瀬戸陶土層の古土壌記載と堆積相解析を行い,古土壌の多様性を見出し,当時の風化条件を検討した.堆積相解析結果より,研究地域に分布する陶土層は,蛇行河川システムにおける滞水域,後背湿地,氾濫原において堆積していたことが明らかとなった.古土壌層を3層準で認定でき,これらと現世土壌分類との対比を行った.低地では,inceptisol相当の土壌が形成され,有機物供給量が多い場合は還元的土壌環境によってhistosol相当の土壌が形成されていた.これらは,局地的な排水条件や植生,堆積物供給速度に依存する古土壌である.一方で,丘状の地形面では,Bt層が厚く発達し,土壌の乾湿変動に伴う節理の発達や粘土の膨潤によって生じる凹凸状の地形(gilgai microrelief, mukkara subsurface horizon)が形成されていた.この古土壌は,vertisolの特徴をもつultisolに相当し,瀬戸陶土層の堆積当時が,明瞭な季節性を伴う暖温帯で湿潤な気候条件下にあった可能性を示唆する.