地質学雑誌
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総説
水蒸気噴火発生場としての草津白根火山
寺田 暁彦
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2018 年 124 巻 4 号 p. 251-270

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抄録

草津白根火山の山体各所で湧出している温泉水は,高温火山ガスが凝縮することで形成された共通の熱水に由来すると考えられる.温泉流動は浅部に広がる粘土層に規制されている.火口周辺直下では,流体供給を反映した微小地震活動が認められ,湯釜火口湖の直下数100mに広がる釣鐘型の不透水層の下方に接続している.その付近には,LP地震や地球磁場変動の源も求められる.この領域は浅部熱水だまりに相当し,水蒸気噴火は,この熱水だまりや,その流体流動経路から地表へとクラックが形成されることで発生するのであろう.草津白根火山では,噴火先行現象がたびたび観測されてきたが,その内容は,噴火場所や規模と無関係であり,時期とともにその内容も変化している.近代的観測が始まった1970年代以降,顕著な火山活動の変化が観測されても噴火に至らないケースもある.定常的な火山観測データに現れる変化の中から,噴火前兆現象を識別することは容易ではない.

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© 2018 日本地質学会
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