2018 年 124 巻 6 号 p. 435-447
鹿児島市永田川河口付近で掘削された深さ270mのボーリングコアは谷山ボーリングコアと称され,5層準の火砕流堆積物を挟む.この内3層準の火砕流堆積物は構成物組成分析および屈折率測定結果から加久藤,小林および樋脇の各火砕流堆積物に対比されている.しかし,ほかの2層準の火砕流堆積物については対比されていない.
このため,各火砕流堆積物の火山ガラスの主成分元素組成およびレーザーアブレーション(LA)-ICP-MSによる微量元素組成を分析した.その結果,加久藤火砕流堆積物と小林火砕流堆積物の間に小田火砕流堆積物を,小田火砕流堆積物と小林火砕流堆積物との間に樋脇(下門)火砕流堆積物ときわめて記載岩石的特徴が類似する下門–U火砕流堆積物を識別した.下門–Uと樋脇(下門)火砕流堆積物は,火山ガラスの主成分元素組成が近似し主成分では識別できないが,微量元素組成はSc,Zr,Baに差異があり,この特徴から両テフラを識別できることが明らかとなった.