地質学雑誌
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巡検案内書:第125年学術大会(2018・札幌大会)
千島海溝沿岸域において認められる超巨大地震津波痕跡群と広域地殻変動
七山 太渡辺 和明重野 聖之石井 正之石渡 一人猪熊 樹人
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2018 年 124 巻 6 号 p. 413-433

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抄録

千島海溝沿岸域は本邦屈指の地震多発地帯である.この地には未開の原野も多く,手つかずの自然が残されており,400~500年間隔で繰り返し発生した超巨大地震(17世紀型)によって生じた離水地形や津波堆積物が観察できる唯一無二の地域と言える.また北海道東部には偏西風によってもたらされた完新世テフラが1000年オーダーの頻度で挟在し,地震津波イベントの同時性を議論するうえで有用である.津波堆積物の自然露頭は北海道東部太平洋沿岸でも限られるが,この巡検で最初に議論する根室市西端部のガッカラ浜地域には小規模な沿岸湿原が存在し,その太平洋側には湿原堆積物の断面である泥炭層が,高さ約2m程度の海蝕崖が連続して露出している.この露頭では,6層の完新世テフラと過去4000年間に発生した12層の津波堆積物を確認することができる.一方,根室海峡に面する風蓮湖と野付半島には,我が国には珍しい現在も活動的なバリアーシステムが認められている.これらの沿岸地形を特徴づける分岐砂嘴(バリアースピット)の相互の分岐関係と7層の完新世テフラとの対比によって,過去5000年間の地形発達史が解読され,このうち過去3回分の離水(強制的海退)については,超巨大地震(17世紀型)に伴う数mオーダーの広域地殻変動が大きく寄与している可能性が示唆される.

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© 2018 日本地質学会
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