2018 年 124 巻 9 号 p. 725-739
断層にかかる応力が地震サイクルのどの段階にいるかは,滑り始めるために必要な応力(静摩擦強度)にどれだけ迫っているかで決まる.断層の強度を知ろうと,様々な手法が試みられているが,手法ごとで強度の意味合いが異なるにも関わらず直接比較されていることに,現在も続く断層強度に関する論争の根本的な原因があると思われる.この問題を再整理する上で,高速摩擦実験の知見が果たした役割は大きい.最近の詳細の地震波解析から,強度は空間的に一様ではないことが示されるようになった.今後,断層面上の強度の不均一とそれを起因とする応力の不均一を生じさせるメカニズムについて考察する必要が出てくるだろう.詳細の地震波解析と岩石力学からの解釈を得た時,地質学がその正しさを検証できるよう学問分野の垣根を越えた学際的な視野の必要性について訴えたい.