地質学雑誌
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124 巻, 9 号
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125周年記念特集:日本列島の形成過程
総説
  • 田沢 純一
    2018 年 124 巻 9 号 p. 655-673
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    日本の古生代動植物群(おもに腕足類)の古生物地理に関する124篇の論文について総括した.これらの研究から以下の4つの構造地質学的なできごとが示唆される.(1)原日本はシルル紀~ペルム紀には北中国地塊周辺海域の造山帯(中央アジア造山帯)に存在した.(2)原日本はペルム紀に奥只見-飛騨外縁帯-南部北上帯-黒瀬川帯の順序で北から南へ1列に並んでいたが,後期ペルム紀以降,おそらく前期白亜紀~古第三紀の左横ずれ運動によって再配列をした.(3)秋吉帯の石灰岩-玄武岩ブロックは前期石炭紀~中期ペルム紀に,原日本に近い北半球のパンサラッサで礁-海山として形成された.(4)美濃帯の石灰岩-玄武岩ブロックは後期石炭紀~後期ペルム紀に,北アメリカに近いパンサラッサ赤道地域で礁-海山として形成された.

  • 星 博幸
    2018 年 124 巻 9 号 p. 675-691
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    西南日本の15Ma高速回転モデルは現在も日本列島の地質学研究に大きな影響を与えている.しかし,微化石層序や放射年代測定の進展,および回転を示すと考えられていた中期中新世残留磁化方位の最近の解釈は,回転年代が従来考えられていたよりも古くなる可能性を示している.今回筆者はこの四半世紀に西南日本から報告された古地磁気と年代のデータをレビューした.重要な結論は,回転が18~16Maの間のある時期に起こったということだ.西南日本が東西縁辺部を除き剛体的に回転したと仮定すると,回転量の上限は41.7±5.4°で,実際にはそれより数度程度小さかったかもしれない.回転の平均角速度は約21°/Myrか,より大きかった可能性がある.日本海拡大初期(始新世~漸新世)に西南日本はほとんど回転を伴わずに大陸から分裂・移動し,約18~16Maに時計回りに40°程度回転しながら現在の位置まで急速に移動したと考えられる.

  • 中嶋 健
    2018 年 124 巻 9 号 p. 693-722
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    近年の高精度年代測定により,始新世~中期中新世にかけ,日本海拡大に伴って日本列島の陸域では多段階のリフティングが生じ,不整合で区切られたリフト堆積盆の発達があったことが明らかになった.これらは,大陸リフト,日本海盆の拡大,大和海盆の第1期および第2期の拡大そして東北本州リフト系の活動に終わる,一連の日本海リフト系の多段階のリフティングに応じて形成された.瀬戸内区には,古第三紀の広大な堆積盆が形成されたことが明らかになった.15Maに西南日本弧は隆起し,沈降する東北日本弧とのコントラストが顕著になった.直後に外帯火成活動や瀬戸内火山岩類の特異な火成活動が西南日本弧で生じた.東北日本弧では,12Ma頃より奥羽山脈の隆起と日本海沿岸の沈降を伴う圧縮テクトニクスが生じ,半閉鎖的・還元的日本海が成立して根源岩が形成された.6Ma頃より東北日本,西南日本弧ともに圧縮場が強まり短縮変形が進んできた。

特集 125周年記念特集:構造地質学の最近25 年の成果と今後の展開(その2)
総説
  • 高橋 美紀, 廣瀬 丈洋, 飯尾 能久
    2018 年 124 巻 9 号 p. 725-739
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    断層にかかる応力が地震サイクルのどの段階にいるかは,滑り始めるために必要な応力(静摩擦強度)にどれだけ迫っているかで決まる.断層の強度を知ろうと,様々な手法が試みられているが,手法ごとで強度の意味合いが異なるにも関わらず直接比較されていることに,現在も続く断層強度に関する論争の根本的な原因があると思われる.この問題を再整理する上で,高速摩擦実験の知見が果たした役割は大きい.最近の詳細の地震波解析から,強度は空間的に一様ではないことが示されるようになった.今後,断層面上の強度の不均一とそれを起因とする応力の不均一を生じさせるメカニズムについて考察する必要が出てくるだろう.詳細の地震波解析と岩石力学からの解釈を得た時,地質学がその正しさを検証できるよう学問分野の垣根を越えた学際的な視野の必要性について訴えたい.

  • 堤 浩之, 近藤 久雄, 石山 達也
    2018 年 124 巻 9 号 p. 741-757
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    本論文は,主に1990年以降に公表された論文や活断層図などを基に,日本の活断層研究の最近25年間の動向をまとめたものである.1995年の兵庫県南部地震以降,国の地震研究体制が大きく変化し,それに伴い活断層研究の体制が大きく変わった.それ以前とは比較にならない多額の予算が投入され,活断層の分布や活動履歴,地下構造に関する情報が急増し,活断層から発生する地震の長期予測に資するデータが蓄積された.一方,近年続発した内陸直下型被害地震は,活断層から発生する地震の規模や発生様式が多様かつ複雑であることを示しており,固有地震モデルに基づく地震の長期評価の妥当性の検証が必要である.活断層研究は,空中写真判読による地形解析と現地踏査を基礎にしながらも,近年急速に発達している宇宙測地学・物理探査・詳細地形データなどを取り入れて多面的に展開される必要がある.

  • 重松 紀生, 大谷 具幸, 小林 健太, 奥平 敬元, 豊島 剛志
    2018 年 124 巻 9 号 p. 759-775
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    断層の内部構造に関し,この25年間における主として日本地質学会員の成果を中心にまとめた.脆性断層の研究において,野島断層掘削をきっかけに内部構造のみならず,断層の水理学的性質や摩擦の研究がさかんに行われ,断層研究における大きな転機となった.より深い脆性領域の断層岩内では圧力溶解クリープと,雲母類の塑性変形が報告され,そのダメージは結晶内歪を周囲の岩石に与えることなどが明らかになった.また脆性–塑性遷移領域に対しては応力や歪速度の条件を地質学的の評価しようとする試みが行われ,破壊開始過程や変形の空間的不均質が明らかにされている.さらに下部地殻では斜長石や輝石の転位クリープの一方で,変形中の細粒物質の生成による変形機構遷移の重要性が指摘されている.近年,下部地殻における破壊現象の痕跡が見つかっており,地震による応力集中が一つの可能性として考えられている.その理解には今後の研究が期待される.

エラータ
  • 志村 侑亮, 常盤 哲也, 竹内 誠, 山本 鋼志
    2018 年 124 巻 9 号 p. 776
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/12/15
    ジャーナル フリー

    訂 正

    123巻11号(2017年11月号)掲載の志村ほか論文(p. 925-937)において,手法の記述と引用文献に誤りがありましたので,以下のように訂正いたします.(地質学雑誌編集委員会)

    [訂正事項]

    p. 930 右段上から18~21行目:手法の記述と引用文献の誤り

    (誤)最も若いクラスター年代は,Dickinson and Gehrels(2009)に基づき,1σの誤差で重複する最も若いクラスター(2粒子以上のジルコンから構成される)の加重平均値とする.

    (正)最も若いクラスター年代は,年代的に隣り合い1σの誤差で重複し続ける最も若いクラスターの加重平均値とする.

    p. 935 左段上から34~37行目:引用文献の削除

    (誤)Dickinson, W. R. and Gehrels, G. E., 2009, Use of U-Pb ages of detrital zircons to infer maximum depositional ages of strata: A test against a Colorado Plateau Mesozoic database. Earth Planet. Sci. Lett., 288, 115-125.

    (正)削除.

    [説明]

    志村ほか(2017)では,堆積年代を制約するためDickinson and Gehrels(2009)のYC1σを用いて最も若いクラスター年代を算出した.Dickinson and Gehrels(2009)のYC1σの正しい計算方法は,「1σの誤差で示される若い年代と1σの誤差で重なる2粒子以上でつくる最も若い年代クラスターの加重平均値」であるが,志村ほか(2017)では計算方法を誤認し,「年代的に隣り合い1σの誤差で重複し続ける最も若いクラスターの加重平均値」を求めていたことが判明した.誤認した方法では,本来含めるべきではない古い年代も含めて加重平均値を求めたため,試料15083005の最も若いクラスター年代値は著しく古い値となった.

    志村ほか(2017)のジルコン年代に関して,Dickinson and Gehrels(2009)のYC1σに基づき最も若いクラスター年代を再計算すると,試料15111701では106.6±2.5Ma(1σ),試料15100202では108.6±1.8Ma(1σ),および試料15083005では105.5±1.8Ma(1σ)となる.しかし,これら3試料の計算方法の誤認が志村ほか(2017)の結論を変えることはない.

    (著者一同)

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