地質学雑誌
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総説
水路実験による陸上津波堆積物研究の現状と今後の可能性
山口 直文
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2019 年 125 巻 2 号 p. 121-136

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抄録

この総説では,これまで行われてきた水路実験を用いた津波堆積物の研究の現状と今後の可能性を,フィールドでの津波堆積物研究において課題とされている点と照らし合わせながらまとめた.水路実験は,水理条件や堆積物,地形の条件などを設定して調べることができることから,低頻度で直接観測が難しい津波堆積物形成の理解に有効であると考えられている.これまでの水路実験による研究では,津波堆積物の空間分布などの特徴から津波規模や水理条件を推定する土砂輸送モデルの高精度化に向けた研究などにおいては一定の貢献が認められる一方で,地質学的な視点による津波堆積物の調査や観察に貢献できるような成果はまだ多いとは言えない.こうした中,最近行われている,陸上地形に注目した水路実験や,認識可能な堆積構造を形成できる大型水路実験は,津波堆積物の正確な識別,解釈に様々な示唆を与えるものとなっており,さらなる研究の進展が期待される.

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© 2019 日本地質学会
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