地質学雑誌
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125 巻, 2 号
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総説
  • 山口 直文
    原稿種別: 総説
    2019 年125 巻2 号 p. 121-136
    発行日: 2019/02/15
    公開日: 2019/06/07
    ジャーナル フリー

    この総説では,これまで行われてきた水路実験を用いた津波堆積物の研究の現状と今後の可能性を,フィールドでの津波堆積物研究において課題とされている点と照らし合わせながらまとめた.水路実験は,水理条件や堆積物,地形の条件などを設定して調べることができることから,低頻度で直接観測が難しい津波堆積物形成の理解に有効であると考えられている.これまでの水路実験による研究では,津波堆積物の空間分布などの特徴から津波規模や水理条件を推定する土砂輸送モデルの高精度化に向けた研究などにおいては一定の貢献が認められる一方で,地質学的な視点による津波堆積物の調査や観察に貢献できるような成果はまだ多いとは言えない.こうした中,最近行われている,陸上地形に注目した水路実験や,認識可能な堆積構造を形成できる大型水路実験は,津波堆積物の正確な識別,解釈に様々な示唆を与えるものとなっており,さらなる研究の進展が期待される.

論説
  • 山口 覚, 伊東 修平, 東川 利恵, 小田 佑介, 上田 哲士, 小河 勉, 村上 英記, 丹保 俊哉, 加藤 茂弘
    2019 年125 巻2 号 p. 137-151
    発行日: 2019/02/15
    公開日: 2019/06/07
    ジャーナル フリー

    山崎断層帯南東部に属する琵琶甲断層の西側セグメントを横切る測線に沿ってaudio-frequency Magnetotelluric法探査を行い,深さ1.5kmまでの2次元比抵抗構造モデルを得た.このモデルは表層付近の低比抵抗層,深さ350~約500mに側方に連続する低抵抗領域,および深さ900~約1400mの2つの低比抵抗領域で特徴付けられる.琵琶甲断層西側セグメントの地下の浅部および深部には断層活動に関係する低比抵抗領域があり,これらは琵琶甲断層の地下形状を示すと考えられ,また,琵琶甲断層東側セグメントが西側セグメントの北東側に延伸し並行して存在することが示唆された.
    山崎断層帯北西部に属する土万断層の2次元比抵抗構造モデルと比較すると,断層直下の低比抵抗領域および深部の低比抵抗領域の端が断層地表トレースと一致することは共通するが,後者の断層に対する相対位置が異なる様子が見いだされた.

  • 木村 光佑, 早坂 康隆, 柴田 知之, 川口 健太, 藤原 弘士
    2019 年125 巻2 号 p. 153-165
    発行日: 2019/02/15
    公開日: 2019/06/07
    ジャーナル フリー

    島根県津和野地域の舞鶴帯北縁部から古原生代の花崗岩類と正片麻岩を見出した.この岩体は苦鉄質岩類を伴い,ペルム系の堆積岩類に挟まれた幅数百mの狭長な地帯にブロックの集合体として産する.ジルコンのU-Pb年代は,正片麻岩が1836±17Ma,トーナル岩-石英閃緑岩が1853±14Ma,花崗閃緑岩が415.2±2.5Maであった.古原生代のジルコンは2.8-2.1Gaの古いコアを持ち,北中国地塊由来と考えられる.デボン紀のものは年代から舞鶴-大江地域の舞鶴帯北帯西部岩体に対比され,岩相構成と産状から古原生代岩体も舞鶴帯北帯構成要素と考えられる.本岩体は,古い地質体ほど構造的上位に位置するという西南日本内帯のパイルナップ構造の一般則から外れ,ジュラ紀の付加体・変成岩と接する舞鶴帯北縁部に産することから,舞鶴帯北縁に沿う横ずれ断層によって異地性ブロックとして定置した可能性がある.

  • 池田 雄輝, 大和田 正明, 西塚 大, 亀井 淳志
    原稿種別: 論説
    2019 年125 巻2 号 p. 167-182
    発行日: 2019/02/15
    公開日: 2019/06/07
    ジャーナル フリー
    電子付録

    山口県東部,屋代島西部と室津半島には,領家帯の高変成度岩と変成岩の構造と調和的な蒲野花崗閃緑岩が分布する.蒲野花崗閃緑岩は鉱物組み合わせから,黒雲母花崗閃緑岩,ザクロ石花崗閃緑岩,角閃石花崗閃緑岩そして黒雲母花崗岩に区分される.黒雲母花崗閃緑岩は広域に分布するのに対し,ザクロ石花崗閃緑岩と角閃石花崗閃緑岩は泥質片麻岩と同時期に貫入した閃緑岩の周囲に分布する.鉱物・全岩化学組成の特徴は,蒲野花崗閃緑岩の岩相変化が黒雲母花崗閃緑岩マグマと泥質片麻岩との同化作用や閃緑岩マグマとの混合・混交作用によって生じたことを示す.一方,黒雲母花崗岩は,黒雲母花崗閃緑岩から分化したマグマに由来した可能性が高い.

  • Kazumasa Aoki, Yoshiki Seo, Shuhei Sakata, Hideyuki Obayashi, Yuta Tsu ...
    原稿種別: Articles
    2019 年125 巻2 号 p. 183-194
    発行日: 2019/02/15
    公開日: 2019/06/07
    ジャーナル フリー
    電子付録

    本研究では三波川変成岩類の堆積・付加年代および変成年代を制約するため,四国中央部,別子-汗見川地域に産する三波川プロパーの砂質片岩に注目し,砕屑性ジルコンを用いたレーザー照射型誘導結合プラズマ質量U-Pb年代測定を行った.その結果,各試料から得られた最も若い年代値は,変成度や原岩層序に対応関係はなく,すべて約100-90Maの年代を示した.このことは緑泥石帯上部から灰曹長石-黒雲母帯の変成岩が被った昇温変成作用の時期は100-90Ma以降であり,その原岩は白亜紀四万十付加体相当であることを示す.また,本研究から三波川変成帯は堆積および変成年代ともに異なる3つの変成岩ユニットからなることが示唆された.

報告
  • 志村 俊昭, 小島 萌, 大橋 美由希, 山根 幹生, Anthony I. S. Kemp
    2019 年125 巻2 号 p. 195-200
    発行日: 2019/02/15
    公開日: 2019/06/07
    ジャーナル フリー
    電子付録

    Small olivine-norite bodies crop out along the Ougon-douro, southern part of the Hidaka metamorphic belt. This outcrop has been visited by many geological excursions since the 1970s. However, the geological relations with the adjacent igneous rocks were unclear because the intrusive boundaries were covered by talus for many years. These boundaries could, however, be observed from 2014 to 2017. The olivine-norite bodies might constitute syn-plutonic dykes in the biotite granodiorite. It mainly consists of orthopyroxene, plagioclase, olivine, amphibole, phlogopite, and clinopyroxene, in order of abundance. They include small amount of chromite, magnetite, titanite, pyrrhotite, pentlandite, and chalcopyrite. Serpentinite and chlorite occur around mafic minerals. The rocks are modally classified as olivine-melanorite to olivine-melagabbronorite. Geochemically, these rocks have negatively sloped chondrite-normalized REE patterns. The Sr and Nd isotope ratios are enriched relative to typical MORB.

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