地質学雑誌
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総説
泥火山における生物地球化学過程とその意義
井尻 暁
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キーワード: mud volcano, deep biosphere, methane
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2020 年 126 巻 1 号 p. 29-37

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抄録

泥火山は,高間隙水圧をもった堆積物が泥ダイアピルとして上昇し地表に噴出した小丘で世界各地の大陸縁辺域に分布している.近年の研究により,泥ダイアピル中の微生物が海底下の物質循環に貢献していること,泥火山の活動により地下深部の微生物が地表に運ばれていることが明らかになってきた.種子島沖の泥火山では海底下に存在するAtribacteriaがメタンと共に泥火山から海水中に放出・拡散されているのが発見され,海底泥火山が海洋と地下生命圏を繋ぐ地質学的な生命移動・拡散経路となっていることが確かめられている.熊野海盆の泥火山で行われた科学掘削により,流体の移動プロセスが微生物の代謝に深く関与していること,海底下の微生物活動がこれまで認識されてきた以上に地球の炭素循環に大きく寄与している可能性が示唆されている.

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© 2020 日本地質学会
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