地質学雑誌
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論説
栃木県北部,余笹川岩屑なだれ堆積物の層序・年代と運搬過程
菊地 瑛彦長谷川 健
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2020 年 126 巻 6 号 p. 293-310

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抄録

栃木県北部,那須火山群から発生した余笹川岩屑なだれ堆積物の層序・年代を明らかにし,運搬過程を考察した.余笹川岩屑なだれ堆積物は,那珂川流域を中心に広く分布し,塊状で基質相・岩塊相からなる層相を示す.主要な岩塊相として石英含有輝石安山岩~デイサイト質溶岩(SiO2:58~63wt.%)を含む点で黒磯岩屑なだれ堆積物と識別でき,単層でも追跡可能である.層序的には,中部日本を起源とするKMT(0.62Ma)の上位,APm(0.33-0.36Ma)の直下に位置することから,少なくとも33万年前以前に発生したことが分かる.遠方下流域に至っては茨城県北部の粟河軽石層に対比可能で,合計するとその流走距離は100km以上に及ぶ.下流域において,堆積物下部に溶岩岩塊および礫が濃集する(一部で礫支持構造を示す)ことから,河川を流走中に水に飽和して流動化しラハールに変化したため,長距離を流走できたと考えられる.

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© 2020 日本地質学会
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