地質学雑誌
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巡検案内書:第128年学術大会(2021名古屋大会)
紀伊半島中央部の四万十帯と三波川帯の地質トラバース
志村 侑亮 竹内 誠常盤 哲也
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2020 年 126 巻 7 号 p. 383-399

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抄録

沈み込み帯における,浅部での付加体形成から深部での高圧型変成岩類の形成・上昇といった一連の付加-上昇テクトニクスを解明する上で,同時期に形成された付加体と高圧型変成岩類を対象とし,両地質体の地質構造の関係を明らかにすることは重要である.近年,砕屑性ジルコンU-Pb年代測定により,三波川帯に属する高圧型変成岩類の主に砂質片岩から白亜紀の砕屑性ジルコンが見出され,主な原岩である陸源砕屑岩の堆積年代が四万十帯の白亜紀付加体の堆積年代と一致することが明らかになった.すなわち,西南日本外帯の白亜紀沈み込み帯においては,浅部で四万十帯の付加体が,深部で三波川帯の高圧型変成岩類が形成されていたことが想定できる.紀伊半島中央部は,秩父帯のジュラ紀付加体が欠如し,四万十帯の白亜紀付加体と三波川帯の高圧型変成岩類が接して分布しているため,白亜紀沈み込み帯における浅部相から深部相までの一連の岩相や地質構造を検討できる重要な研究地域である.本巡検では,紀伊半島中央部の四万十帯と三波川帯をトラバースし,白亜紀の付加体から高圧型変成岩類までの岩相や地質構造を観察する.

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© 2020 日本地質学会
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