愛知県名古屋市東方から岐阜県南東部に分布する中新統~更新統の瀬戸層群は,窯業原料となる粘土(陶土)を産する陸成層として知られ,これまでに粘土鉱物学,無機化学,堆積学,構造地質学,層序学といった様々な視点から,数多くの研究が行われてきた.それらの結果から,陶土の成因には,母岩である花崗岩の風化,細粒砕屑物が堆積盆地に集まるまでの侵食・運搬・堆積プロセス,堆積後の風化や初期続成作用といった複雑なプロセスが関与していることが明らかにされている.また,最近では,本層群に産する古土壌から,堆積当時の気候・風化条件に関する新たな知見が得られている.この地域で稼行されている露天掘りの粘土鉱山は,側方への連続性に乏しい陸成堆積相と地形・堆積環境の変化に伴って多様化する古土壌を観察するために適したフィールドでもある.
本巡検では,愛知県と岐阜県の粘土鉱山に赴き,陸成層と強風化した花崗岩の観察を通して,陶土の成因,古土壌や古風化プロセス,瀬戸層群の地域ごとの堆積環境・古土壌の違いについて理解する.