2020 年 126 巻 8 号 p. 411-423
現在,土の法科学的な検査は主に地質学の手法に基づいているが,土の異同識別能を向上させるには,新たな指標に基づく検査法の開発が必要である.主要造岩鉱物の1つである石英の粒子表面には,粒子の運搬過程や堆積過程を反映した微細な形態が残されている.本研究ではその特徴を利用し,石英粒子の形状や表面形態に基づく法科学的検査法について検討を行った.日本国内の河床および海岸堆積物について,電子顕微鏡により石英粒子の表面形態を観察し,観察結果について主成分分析を行った.また顕微鏡画像を利用して石英粒子の凹凸を算出した.採取地域ごとに石英粒子の形状や表面形態は異なり,その多様性を利用した検査は異同識別の精度向上に有効であると示唆された.石英粒子の表面形態は,海外の先行研究とおよそ同じ種類が観察されたが,出現頻度が少ない形態もあるため,観察結果の考察は我が国の自然環境の理解に基づいて行う必要があると考えられた.