2021 年 127 巻 10 号 p. 595-603
四国西部の中央構造線南方を主要な分布域とする中新統久万層群は日本海拡大期の内部変形を記録する地層であり,また中央構造線の運動史の議論においても注目されてきた.その堆積年代は明神層上部の酸性凝灰岩の放射年代により前期~中期中新世とされてきた.今回新たに明神層下部の酸性凝灰岩からジルコンを分離しLA-ICP-MSでU-Pb年代を求め238U-206Pb年代の加重平均として15.19 ± 0.15 Maを得た.結果は明神層の堆積時期が中期中新世である可能性を示唆する.上位の石鎚層群の火成岩類の既報ジルコンU-Pb年代は14.2~14.8 Maであり,ぺぺライトの存在など両者の形成に大きな時間間隙がない観察と整合的である.また,酸性凝灰岩のU-Pb年代は外帯珪長質火成岩類の年代範囲と重複し,それらの噴出相に給源を求めることができるかもしれない.