2021 年 127 巻 2 号 p. 69-78
同時性岩脈は,半溶融状態の珪長質マグマと苦鉄質マグマが出会って物理的に混交した結果できたと考えられている.中部地方と近畿地方の領家花崗岩類に伴う同時性岩脈の珪長質岩と苦鉄質岩のジルコンU-Pb年代測定を行い,珪長質岩が90〜94 Ma,苦鉄質岩が70〜75 Maの結果を得た.単一結晶粒中,部分的に溶蝕・再成長した内部構造がCL像で観察されるジルコンの溶蝕再成長部が約70 Ma,それ以外の部分が約90 Maを示す珪長質岩も見つかった.この岩脈の貫入母岩は90〜94 Maの古期領家花崗岩であり,近傍の同時性岩脈の苦鉄質岩から約70 MaのU-Pb年代が得られていることから,この同時性岩脈は当時すでに固結していた90〜94 Maの領家花崗岩類に約70 Ma頃苦鉄質マグマが侵入してその一部を融解し,局所的にマッシュ状の部分溶融帯を作ったことで苦鉄質マグマと混交して同時性岩脈を形成したと考えられる.