同時性岩脈は,半溶融状態の珪長質マグマと苦鉄質マグマが出会って物理的に混交した結果できたと考えられている.中部地方と近畿地方の領家花崗岩類に伴う同時性岩脈の珪長質岩と苦鉄質岩のジルコンU-Pb年代測定を行い,珪長質岩が90〜94 Ma,苦鉄質岩が70〜75 Maの結果を得た.単一結晶粒中,部分的に溶蝕・再成長した内部構造がCL像で観察されるジルコンの溶蝕再成長部が約70 Ma,それ以外の部分が約90 Maを示す珪長質岩も見つかった.この岩脈の貫入母岩は90〜94 Maの古期領家花崗岩であり,近傍の同時性岩脈の苦鉄質岩から約70 MaのU-Pb年代が得られていることから,この同時性岩脈は当時すでに固結していた90〜94 Maの領家花崗岩類に約70 Ma頃苦鉄質マグマが侵入してその一部を融解し,局所的にマッシュ状の部分溶融帯を作ったことで苦鉄質マグマと混交して同時性岩脈を形成したと考えられる.
飛騨外縁帯本郷の荒城川層中部から産出した腕足類フォーナ(本郷フォーナ)を記載し,時代と古生物地理について考察した.本郷フォーナは以下の5属6種からなる:Pugilis sp., Marginatia sp., Fluctuaria undata, Fluctuaria sp., Actinoconchus sp., Imbrexia sp. このフォーナは前期石炭紀(ビゼー期後期)を示す.したがって荒城川層中部は上部ビゼー階に対比される.古生物地理学的に本郷フォーナは東北日本(南部北上帯)と中国西北部(新疆)の前期石炭紀腕足類フォーナに類縁がある.このことから,ビゼー期後期には北中国地塊とシベリア地塊の間の広大な地域を占める中国北方区(North China Province)に属していたと推定される.また,ビゼー期後期に本郷地域を含む飛騨外縁帯は中央アジア造山帯(CAOB)に含まれていたと推定される.岩相層序と化石相において荒城川層は南部北上帯の石炭系に似ているが,それは飛騨外縁帯と南部北上帯の構造的連続を支持する一つの証拠となる.
美浜テフラの対比を目的として,美浜テフラ模式地で採取した同テフラの角閃石について主成分および微量成分元素組成分析をおこない,九州火山起源のテフラの保存が良好な四国沖ピストンコアMD012422に挟まれる角閃石含有テフラとの対比を試みた.その結果,美浜テフラはMD012422コアの深度26.00-26.10 mに挟まれるGHo-2(26.10)テフラと角閃石の記載岩石学的特徴および層序関係が一致し,対比できることが明らかとなった.この対比により,美浜テフラは九州に分布する火山起源のテフラである可能性が高く,MIS5.5の高海面期初頭に降灰したことが明かとなった.
秋田県出羽山地の笹森丘陵北東部に分布する海成新第三系の須郷田層・女川層・船川層・天徳寺層を対象として地質調査と岩相層序区分の再検討を行うとともに,詳細な珪藻化石層序を構築し,本地域の地質と年代層序を総括した.その結果,従来は整合関係とされてきた女川層・船川層境界にハイエイタス(約9.6-9.3 Ma)が存在することが明らかになった.また,須郷田層中に3層,女川層に1層の計4層の海緑石層が挟在し,珪藻化石年代分析により,これらの海緑石層の信頼できる年代が初めて明らかにされた.本地域の海緑石層のうち3層は,日本ですでに報告のある海緑石層に対比できる.
A Paleoproterozoic granite gneiss body was discovered in the Jurassic Daebo granite of the Ogcheon Belt, Geumsan area, South Korea. The granite gneiss is a two-mica variety with a small amount of garnet, and has a peraluminous bulk-rock composition. U–Pb isotope analysis of zircon grain cores by LA-ICP-MS yields a 207Pb/206Pb magma crystallization age of ca. 2.5 Ga. The granite gneiss body is therefore one of the second oldest rocks in South Korea. Zircon grain mantle and rim data yield an upper intercept age of ca. 1.89 Ga and a lower intercept age of 174±74 Ma along the discordia line, which are interpreted to be metamorphic ages related to Paleoproterozoic and Jurassic magmatism, respectively.