地質学雑誌
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論説
飛騨外縁帯本郷の荒城川層から産出した前期石炭紀(ビゼー期後期)腕足類フォーナとその構造地質学的重要性
田沢 純一 鈴木 敬介三宅 幸雄
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2021 年 127 巻 2 号 p. 79-90

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抄録

飛騨外縁帯本郷の荒城川層中部から産出した腕足類フォーナ(本郷フォーナ)を記載し,時代と古生物地理について考察した.本郷フォーナは以下の5属6種からなる:Pugilis sp., Marginatia sp., Fluctuaria undata, Fluctuaria sp., Actinoconchus sp., Imbrexia sp. このフォーナは前期石炭紀(ビゼー期後期)を示す.したがって荒城川層中部は上部ビゼー階に対比される.古生物地理学的に本郷フォーナは東北日本(南部北上帯)と中国西北部(新疆)の前期石炭紀腕足類フォーナに類縁がある.このことから,ビゼー期後期には北中国地塊とシベリア地塊の間の広大な地域を占める中国北方区(North China Province)に属していたと推定される.また,ビゼー期後期に本郷地域を含む飛騨外縁帯は中央アジア造山帯(CAOB)に含まれていたと推定される.岩相層序と化石相において荒城川層は南部北上帯の石炭系に似ているが,それは飛騨外縁帯と南部北上帯の構造的連続を支持する一つの証拠となる.

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© 2021 日本地質学会
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