岐阜県西部には,チャート,泥岩や石灰岩などの堆積岩類や塩基性火山岩類などからなるジュラ紀の付加体が広く分布する.白亜紀に貫入した貝月山(かいづきやま)花崗岩体は,周囲の岩石に接触変成作用をあたえており,特に岩体の南部や東部では幅3-4kmにおよぶ広範囲にわたって再結晶が進行している.そして,方解石-ドロマイト地質温度計とラマン炭質物温度計によって温度構造が定量的に論じられており,典型的な接触変成帯を連続的に観察するのに適した地域である.さらに,接触変成帯中には再結晶石灰岩が広く分布しており,累進的な変成流体の組成変化が論じられている.また,接触部近傍は花崗岩固結時に放出された熱水によって交代作用を受けており,その程度に応じて発達するさまざまなスカルンや交代脈を観察できる.今回の巡検では,接触変成帯高温部を中心にスカルン,ホルンフェルスや交代作用を受けた塩基性岩とあわせて,貝月山花崗岩本体や接触変成帯中に貫入しているランプロファイア岩脈を見学する予定である.