2021 年 127 巻 7 号 p. 403-413
東北日本,北上山地西縁に分布する中期中新世稲瀬火山岩類の古地磁気測定を行った.試料採取地点の平均磁化方位(n=19)は大きなばらつきを示すものの,鉛直軸まわりの小円に沿うという特徴が見られた.試料を採取した安山岩溶岩および貫入岩の岩相も考慮すると,この特徴の原因は調査地域における構造ブロック回転と考えられる.今回の結果は,前期中新世の日本海急速拡大期だけでなく中期中新世以降にも東北日本において構造ブロック回転が起こったことを示唆する.それは,調査地域に発達している複数系統の横ずれ断層が15 Ma以降に運動したことによって起こったと考えるのが妥当である.この構造ブロック回転は島弧スケールの右横ずれ地殻変形と関係しているかもしれない.