2021 年 127 巻 9 号 p. 545-561
八甲田-十和田カルデラ群,湯ノ沢カルデラから噴出した尾開山凝灰岩は陸成の溶結凝灰岩相と海成の非溶結凝灰岩相からなる.本研究では各相から採取した5試料についてジルコンのU-Pb・FTダブル年代測定を行った.非溶結凝灰岩相の3試料のU-Pb年代値は3.9 Maに集中したが,溶結凝灰岩相のうち同凝灰岩の模式地である尾開山中腹の試料は8.7 Ma,大仏公園の黒曜岩試料は5.3 MaのU-Pb年代を示した.これらU-Pb年代結果はダブル年代測定で得たFT年代と誤差範囲で一致することから高精度・高確度噴出年代を決定することができた.これにより,尾開山凝灰岩非溶結凝灰岩相の噴出年代が3.9 Maであることを確定した.一方,流紋岩(溶結凝灰岩相)から得られた5.3 Maの年代値もまた尾開山凝灰岩の噴出年代を示すと考えられるが,3.9 Maに噴出した溶結凝灰岩相がある可能性は否定できない.さらに,尾開山山体の溶結凝灰岩(8.7 Ma)は後期中新統に対比される.同溶結凝灰岩相の噴出年代と分布域については今後検討を要する.