2022 年 128 巻 1 号 p. 29-42
東京都湾岸部の沖積低地(東京低地)の16地点で常時微動観測を行い,各地点で地盤の平均S波速度とH/Vスペクトルのピーク周波数すなわち地盤の共振周波数を推定した.これにより,表層の軟弱層が厚いと共振周波数が低くなることが示された.1/4波長則を適用して地盤の共振周波数を特徴付けるS波速度不連続面の深さを算出したところ,ばらつきは大きいものの,検討した13地点中7地点において,従来物性境界と考えられてきた七号地層/有楽町層境界よりも下位の,七号地層の砂泥互層中に位置することが示された.この不一致の原因として,七号地層の砂泥互層中や基底礫層上面の物性境界が影響を与えている可能性が考えられ,H/Vスペクトルピーク周波数のばらつきは砂泥互層を構成する蛇行河川堆積物やエスチュアリー堆積物の不均一性に由来すると考えられる.